インボイス未登録で値引きされた!交渉方法と法的対応
「消費税分、引かせてもらいます」
インボイス未登録のフリーランスが、取引先からこう言われるケースが増えています。
今まで11万円(税込)だった請求が、突然10万円に。年間で12万円の減収です。これは受け入れるしかないのでしょうか。
結論から言うと、一方的な値引きは違法になる可能性があります。
何が問題なのか
取引先の言い分
「あなたがインボイス未登録だから、こちらは消費税を控除できない。その分を値引きしてほしい。」
これ自体は理解できる主張です。取引先の実質コストが増えるのは事実です。
問題になるのは「一方的」な場合
公正取引委員会のガイドラインによると、以下のケースは独占禁止法上の「優越的地位の濫用」に該当する可能性があります。
- 十分な協議なく一方的に値引きを通告する
- 消費税相当額の全額を値引きする(経過措置を無視)
- 取引価格の据え置きを強要する(実質的な値引き)
違法になるケースとならないケース
違法の可能性が高いケース
- 「来月から消費税分を引きます」と一方的に通告された
- 話し合いの余地を与えられない
- 経過措置(80%控除可能)を考慮せず、全額の値引きを要求される
- 下請法の対象取引で、一方的に下請代金を減額される
違法にならないケース
- 双方が協議した上で、合理的な価格調整を行う
- 経過措置を考慮した値引き幅(たとえば消費税の20%分だけ)
- 他の取引条件(発注量の増加など)と合わせた総合的な交渉
具体的な交渉方法
ステップ1:まず冷静に状況を確認
感情的にならず、取引先の要求内容を正確に把握しましょう。書面やメールで要求内容を記録しておくことが大切です。
ステップ2:経過措置を説明する
取引先が経過措置を知らない場合があります。
「現在、インボイス未登録事業者からの仕入れでも80%は控除可能です。つまり、御社の負担増は消費税の20%分(=支払額の約2%)です。」
このように具体的な数字を示すと、全額値引きの不合理さが伝わります。
ステップ3:代替案を提示する
いくつかの選択肢を用意して交渉しましょう。
- 経過措置で控除できない分(約2%)のみ値引きする
- インボイス登録を検討する代わりに、一定期間は現行価格を維持してもらう
- 支払条件の改善(支払いサイトの短縮)で補填する
ステップ4:書面で合意する
交渉がまとまったら、必ず書面で記録しましょう。口頭の約束は後でトラブルになります。
下請法の対象かチェック
以下の条件に当てはまる場合、下請法が適用されます。
- 親事業者の資本金が1,000万円超
- あなた(下請事業者)の資本金が1,000万円以下
- 役務提供委託などの取引がある
下請法の対象取引では、発注後の代金減額は原則禁止です。インボイス未登録を理由にした一方的な減額は、下請法違反の可能性が高いです。
相談窓口
困った場合は以下の窓口に相談できます。
- 公正取引委員会:独占禁止法に関する相談
- 中小企業庁 下請駆け込み寺:下請法に関する相談(TEL: 0120-418-618)
- よろず支援拠点:経営全般の相談(各都道府県に設置)
- インボイス相談窓口:国税庁が設置(TEL: 0120-205-553)
それでも解決しない場合
交渉がうまくいかない場合の選択肢です。
インボイス登録する
最終的に登録したほうが合理的と判断することもあります。2割特例を使えば負担は抑えられます。
取引先を変える
1社に依存している状態はリスクです。複数の取引先を確保することを検討しましょう。
法的手段を取る
明らかに違法な場合は、公正取引委員会への申告や弁護士への相談を検討してください。
まとめ
- 一方的な値引きは独占禁止法違反の可能性がある
- 経過措置を活用して合理的な交渉を
- 下請法の対象取引は特に保護が手厚い
- 困ったら公的な相談窓口を活用する
取引先との交渉には、正確な数字が武器になります。フリーフリーで日々の帳簿をつけておけば、インボイス登録した場合の税負担を即座にシミュレーションできます。